残滓

保護犬カフェ・パーク と ライブ と ビーズ作品

熱帯樹

先週『チャイメリカ』見たとこやのに、今週また同じ劇場で『熱帯樹』。

ちなみに24日は友達と映画行って、25日はぼっちでライブ行く。

もうちょっとお楽しみは分散してほしい。

 

うちが行ったのは夜の部。

もちろん午後半休取って。

兵庫公演は3/12~13と平日公演しかない。

そのせいか、開場時間過ぎても当日券販売中やった。

 

この公演は友達の分も含めて、自力でゲットした!
しかも5列目と6列目!

うちが取ったにしては、かなりの良席!

で、うちが優先で5列目に座らせてもらったんやけど、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールは、5列目まで段差なしの平地。

しかも座席のずれかたが微妙で、舞台中央が前の席の人の頭でモロに隠れる席やった。

見たかうちのチケット運!(泣)

 

まだこれから愛知公演があるので、感想は「続きを読む」に隠します。

チャイメリカ』は難しい話やったけど、『熱帯樹』はシンプルな話なので予習の必要なし。

予備知識なしで楽しんでください。

 

 

三島由紀夫作品なので、凝った舞台装置ではないやろうなと思ってたけど、舞台転換はなるべく暗転を使わないように工夫されてた。

舞台の両脇に蛇腹折りの黒い壁があって、キャスターで自由に動くようになってた。

それで舞台を隠して、壁の前で別のシーンを演じてる間に、壁の後ろでセットチェンジすると。

壁の上の部分は細長い照明がついてて、段差のある壁の輪郭がわかるようになってる。

言葉で説明するのは難しいな…。

壁を折りたたむと、山水画の渓谷みたいに見えた。

壁の一番下には筆か刷毛で描いたような、かすれた曲線が描かれてた。

たぶん海を表現してるんやろうと思う。

 

舞台中央に置かれたベッドの上で、独り言をつぶやいてる岡本玲ちゃんのシーンから始まる。

これがもう、前の人の頭でまったく見えん。

主に演劇用のホールやと思うし、もうちょっと考えて座席配置してほしかったな…。

玲ちゃん、以前に別の演目で見たことあるけど、その時は元気な可愛い女の子って感じやった。

今回は不治の病で余命幾ばくもない少女役。

すっぴんに見えるメイクで、髪もボサボサ。

エキセントリックな役柄で、イメージが全然違ってびっくりした。

 

そして、今回お目当ての林遣都くん登場。

真っ白なシャツで、真っ白な肌で、輝いて見える。

5列目の距離やと、肉声を聞いてるっていう実感がすごかった。

 

玲ちゃんと遣都くんは実の兄妹でありながら恋人という関係。

何回か熱烈なキスシーンがあるんやけど、いやらしさはなくて可愛らしい子供同士のキスに見えるのが不思議。

なんとか前の人の頭をよけて、隙間から覗き見てた(笑)

 

出演者は5人で、全部血縁者という設定。

その中で、父母兄妹が四角関係になる。

正直、気持ち悪い一家やった(笑)

「これ、家族じゃないよな~」と思いながら見てたら、遣都くん演じる勇が「この家には家族はなくて、男と女がまつわり合っている」という台詞を吐いて、すごいすっきり。

パンフレットにも載ってる台詞なので、これが『熱帯樹』の本題なんやろうなぁ。

 

そして三島作品にしては珍しく、女性が主役の話。

家族内の愛憎劇なんやけど、とにかく女(母・娘)の憎しみあいがすごい。

言葉は綺麗なんやけど、口汚く罵り呪うシーンが多かった。

物語が進めば進むほど、激昂してまくしたてるシーンが多くなるんやけど、誰もまったく台詞かまず。

三島作品独特の凝った言い回しやのに、とにかく滑らかに言葉が出てくる様に圧倒された。

 

ただ、誰にも感情移入できないので、作品への没入感はなかったなぁ。

感情的すぎる女性陣と、行動・思考が浅すぎる男性陣。

他人目線で淡々と変な人たちを見てる感じ。

ちょっと風邪気味なうえに、劇場が乾燥してたみたいで、咳を我慢するのに必死やったせいもあるけど。

 

初めて見た生遣都くんは、とにかく美しかった。

大きな目がライトを受けてキラキラしてるのが、肉眼でもわかった。

ずーっと裸足やし、シャツを脱いで肌着だけになったり、その肌着の襟ぐりがやたら広かったり、その肌着姿でベッドの上で前かがみになったり、妹との事後に前開きシャツ姿になったり。
肌の露出多め。
そして舞台の前に出てきて、観客に向かって語り掛けるようなシーンも多かった。

都ファンを意識してるな~と思うところは多々あったので、「生遣都くんを見に行く」という動機でも正しいんじゃないかと思う(笑)

 

女性陣の台詞が多いのに比べて、勇は台詞は少なめ。

その分、表情だけの演技とか、シルエットだけの演技とか、見どころは多かった。

 

勇、やたら「肩幅が広い」って形容されてたけど、それはどうかなぁ(笑)

若い時ほど華奢ではないけど、男らしさをアピールできるほどごつくもない。

中嶋朋子さんの「豊満な胸」もちょっと無理が(笑)

でもすらっとして美しくて、遣都くんを見に行ったはずやのに、何度も中嶋さんに目を奪われた。

最悪な母親やけど、万人から憎まれる悪役にもなりきれない、怪演でした。

 

ラストは兄妹で心中。

誰かが死なないと終わらない話やな、と思ってたし、「まあそうなるよね」って感じのしっくりくる最後やった。

最後の最後に母親が熱帯樹を植えたがる気持ちはよくわからんかった。

彼女なりの子供たちへの弔いってこと?

 

父親も長くないし、母親の一人勝ち、ってことになりそうやけど、あの母はひとりぼっちでは生きていけなさそう。

で、誰もいなくなった家に、実は生き残ってた勇がふらっと帰ってきそう。

でも勇も自活能力なさそうやしなぁ(笑)

どう転んでも悲劇にしかならん。

しかし遣都くんは悲劇が似合う。

 

カーテンコールは4回あった。

挨拶の言葉は特になし。

全員で舞台に出てきて礼をして去っていくだけ。

やねんけど、3回目くらいから鶴見辰吾さんがお茶目に「バイバイ」とお手振りしてくれて、遣都くんが笑顔になって、一気に和む。

4回目は全員笑顔で、舞台後ろの退場口から客席を覗いて、手を振ってくれた。

その様が「やっと仲良しの家族になった」って感じで、なんだか救われる思いやった。